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実は…ほうじ茶には妊活へ特化した効果なし?成分や注意点を解説

あっさりとした味と香ばしい香りが特徴のほうじ茶。カラダによいイメージのあるお茶ですが、妊活に有効な作用はあるのでしょうか。
また、ほうじ茶に含まれるカフェインの量と妊活への影響も気になるところ。
そこで、妊活とほうじ茶、妊活とカフェインの関係性を詳しく探っていきましょう。

ほうじ茶の有効成分、実はそこまで妊活へ効果なし

ほうじ茶は煎茶や番茶を焙煎したものなので、含まれる栄養成分は元の茶葉に含まれるものとほぼ同じ。代表的なものに、タンニン・カフェイン・ビタミン類などが挙げられます。

しかし、お茶は基本的に茶葉そのものを食べるわけではなく、お湯で抽出した抽出液を飲むもの。
茶葉に含まれる栄養成分は水に溶けにくい性質のものも多いので、抽出液(お茶)にはわずかな量しか溶けだしていないんです。

つまり、ただほうじ茶を飲むだけでは茶葉に含まれている栄養を十分に摂取することができません。
そのため、ほうじ茶との抽出液には妊活にうれしい作用をもたらす栄養成分は、ほぼ含まれていないと考えて良さそうです

ほうじ茶に含まれる香気成分の作用

妊活に大きく作用する成分はほぼ無いとはいえ、あの香ばしい香りが特徴のほうじ茶。
漂ってくる香りが、ココロとカラダをホッと落ち着かせてくれますよね。

実は、ほうじ茶の香りには健康効果が期待できるさまざまな成分が含まれてます。
あの特有の香りがココロとカラダにどう作用するのか、ここからはほうじ茶に含まれる主な香気成分について探っていきましょう。

ピラジンには血行促進効果に期待できる

ピラジンとは、茶葉を焙煎することで増加する香気成分のこと。
ほうじ茶独特のあの香ばしさは、主にピラジンが主成分となっています。

ピラジンに期待できるのは、血流を促したり血栓を防いで血液をサラサラにする効果。
血行が促進されるので、冷え性や肩こりの改善、血管がつまることで起こる脳梗塞などの予防に効果的といわれています。[参考1]

ゲラニオールでリラックス効果が

ゲラニオールは、ローズオイルの主成分としてアロマテラピーなどにも利用される、バラのような甘い香りが特徴の香気成分のこと。

抗菌・抗不安作用があり、体臭を抑える効果やリラックス効果が期待できます。
また、女性ホルモンのエストロゲンの分泌を促す働きも期待されています。[参考1]

テアニンがストレスの軽減に役立つ

テアニンとは、お茶に含まれる旨味成分のこと。とくに玉露や煎茶、抹茶などに多く含まれています。
テアニンを摂取すると、リラックスの神経である副交感神経の働きが活性化し、さらに、リラックス状態のときに多く出現するα波(脳波のひとつ)の上昇が報告されています。[参考2][参考3]

これらのことから、テアニンに期待できるのは、カラダとココロをリラックスさせる効果。
具体的には、ストレスの軽減や集中力の向上、睡眠改善や血圧上昇を抑制する効果などが認められています。

妊活中には注意したいカフェイン。ほうじ茶は含んでいる?

ところで、ほうじ茶にはカフェインが含まれているのでしょうか。
妊活中に飲むなら、しっかり把握しておきたいですよね。

結論からお伝えすると、ほうじ茶に含まれるカフェインは少ないと言われる一方、特別少ないわけではないため、妊活中には注意も必要です。

そこでここからは、ほうじ茶のカフェイン含有量についてご説明します。ほうじ茶以外の飲料と比較しながら詳しく確認していきましょう。

ほうじ茶のカフェイン含有量

文部科学省「日本食品標準成分表2015年版(七訂)」によると、ほうじ茶に含まれるカフェイン含有量は20 mg/100 mLとされています。[参考4]

ちなみに、主な飲料に含まれるカフェイン量は次の通り。

  • ほうじ茶:20mg/100mL(抽出法:茶葉15g/90℃650mL、0.5分)
  • 煎茶:20mg/100mL(抽出法:茶葉10g/90℃430mL、1分)
  • 烏龍茶:20mg/100mL(抽出法:茶葉15g/90℃650mL、0.5分)
  • 玄米茶:10mg/100mL(抽出法:茶葉15g/90℃650mL、0.5分)
  • 紅茶:30mg/100mL(抽出法:茶葉5g/熱湯360mL、1.5~4分)
  • コーヒー:60mg/100mL(抽出法:コーヒー粉末10g/熱湯150mL)
  • インスタントコーヒー(顆粒製品):1杯あたり80mg(2g使用した場合)
  • 麦茶:0mg/100mL

茶葉を強火で焙煎することでカフェインが飛ぶため、ほかのお茶よりも含有量が少なめとされるほうじ茶ですが、実はカフェインが特別少ないというわけではありません。
抽出法によるものの、ほうじ茶を飲むと煎茶と同じくらいのカフェインを摂取することになります。

ほうじ茶による妊活中のカフェインの影響と摂取上限量

では、カフェインは妊活へどのような影響を与えるのでしょうか。妊娠中は控えるべきとされるカフェインですが、妊活中はどうなのかが気になります。
そこで続いては、カフェインがカラダに与える影響についても確認しておきましょう。

カフェインの過剰摂取による健康リスク

カフェインを過剰摂取した場合の急性的な作用は、中枢神経系の刺激によるめまい、興奮や心拍数の増加、不安や不眠症、震え、さらには下痢や吐き気などの直接的な健康被害があります。

さらに、長期的な作用として、人によっては高血圧のリスクが高くなる可能性のあることや妊婦が高濃度のカフェインを摂取した場合、胎児の発育が阻害されてしまう可能性が報告されています。[参考5][参考6]

カフェインの利尿作用により体の冷えを招く可能性が

また、カフェインには利尿作用があり、飲みすぎることでカラダを冷やしてしまうことも。尿へのカルシウム排出量を増やしてしまうため、カルシウム不足に陥りやすいともいわれています。

妊活に冷えは大敵!さらに、カルシウムは精子や卵子を成熟させて活発に動くことを促す重要な栄養素のひとつ。
健康のためにはもちろん、妊娠しやすいカラダづくりのためにも、やはりカフェインの摂りすぎには注意が必要です。

カフェインの摂取目安量

過剰摂取にならないカフェイン量とは一体どれくらいなのでしょうか。
各国際機関では、次のような注意喚起がされています。[参考7]

  • 世界保健機関(WHO)
    1日あたりのコーヒー摂取量は3~4杯まで
  • 英国食品基準庁(FSA)
    1日あたりのカフェイン摂取量を200mg(コーヒーをマグカップで2杯程度)に制限
  • カナダ保健省(HC)
    健康な成人は1日あたりの400mg(コーヒー3杯程度)、妊娠中や授乳中、さらに妊娠を予定している女性は300mg(コーヒー2杯程度)まで

これらの報告を踏まえて、妊活中のカフェイン摂取目安量も1日あたり200~300mg程度に抑えておくと安心です。

妊活前に知っておきたいほうじ茶の基礎知識

ほうじ茶が持つ妊活への影響はいかがでしたか?
ここで改めて、ほうじ茶とは何なのかおさらいしておきましょう。

ほうじ茶とは、その名の通り、緑茶を焙じたお茶のこと。煎茶や番茶などをきつね色になるまで強火でじっくりと焙煎して作ります。

なお、ほうじ茶の香りはこの焙煎によって生まれたもの。
熱を与えられることで、茶葉に含まれる渋み成分のタンニンやうまみ成分のテアニンが香気成分に変化して香ばしい香りを発しているのです。

  • 茶葉の色:褐色
  • 味:苦みや渋みが少なめで香ばしくスッキリとした味わい
  • カラダを温めるお茶

そのため、煎茶や番茶よりも香ばしくあっさりとした味わいで非常に飲みやすいのが特徴。

ちなみに、お茶にはカラダを温めるものと冷やすものがありますが、茶葉を焙煎してしっかりと熱を加えられたほうじ茶はカラダを温めるお茶。
焙煎することで増加する香気成分もカラダを温める効果を高めるとされています。

妊活中に気をつけたいほうじ茶の1日の摂取目安量

続いて、妊活中にほうじ茶を飲む場合の1日あたりの目安量を確認していきましょう。

すでにご説明した通り、ほうじ茶のカフェイン量は20mg/100mLです。
これを、英国食品基準庁の「1日あたりのカフェイン量:200mgまでに制限」を基準にして換算すると、ほうじ茶は1日に1リットルまで飲める計算に

  • ほうじ茶のカフェイン量:20mg/100mL
  • 1日のカフェイン摂取上限量:200mg
    ※英国食品基準庁を参照
  • ⇒ほうじ茶の1日の目安量:1リットル(湯飲み6杯程度)

湯飲み1杯を150mLとすると、1日あたりおよそ6杯のほうじ茶を飲めることになります。

ただし、これはあくまでもほうじ茶だけを飲む場合の話。
煎茶や紅茶、コーヒーなどを併せて摂取している場合には、その量に応じてほうじ茶の量を減らすようにしましょう。

妊活中にほうじ茶を過剰摂取した場合の健康被害

香ばしくあっさりとした味わいで、何杯でも飲んでしまいそうなほうじ茶ですが、飲みすぎには要注意。たくさん飲むと、カラダの害となる可能性もあります。

そこでここからは、ほうじ茶をたくさん飲んだ場合の悪影響について把握していきましょう。

カフェインの過剰摂取により、妊活にも悪影響が

これまでみてきた通り、ほうじ茶にはカフェインが含まれているため、飲みすぎると当然カフェインの摂りすぎにつながってしまいます。

カフェインの過剰摂取はさまざまな健康被害をもたらすほか、利尿作用によってカラダを冷やしたり、体内のカルシウムが不足するなど妊活にとっても悪影響。

ほうじ茶は多く飲んだ場合でも、1日1リットルまでを目安に。コーヒーや紅茶などカフェインを含む飲料をほかにも飲んでいる場合にはさらに摂取量を減らすなど、カフェインの過剰摂取とならないよう注意しましょう。

アクリルアミドの過剰摂取により発がんのリスクに懸念が

アクリルアミドとは、食品に含まれているアミノ酸と糖類が、揚げる、焼く、焙るなどの高温調理されることにより作られる化学物質。

茶葉を高温で焙煎するほうじ茶葉にもアクリルアミドが高濃度で含まれていること、さらに、アクリルアミドは水に溶けやすい性質のため、ほうじ茶葉を抽出したほうじ茶にも溶けだしていることが報告されています。

動物実験の結果から、アクリルアミドに懸念されているのは発がんのリスク。
現在のところ、ヒトを対象とした研究でアクリルアミドと発がんの関係性は明確にされていないものの、食品安全委員会では「できる限りアクリルアミドの摂取量を減らすべき」と結論づけられています。[参考8][参考9]

アクリルアミドの過剰摂取とならないよう、ほうじ茶を極端にたくさん飲むことは控えましょう。

ほうじ茶で妊活サプリや薬を飲むのはアリ?

「サプリや薬をほうじ茶で飲んでも大丈夫?」
口当たりがあっさりとしたほうじ茶は食後にぴったり。ほうじ茶を味わいつつ、ついでに食後の服用となっているサプリや薬を一緒に飲んでしまう…。
ついやってしまいがちな行動ですが、これってアリなのでしょうか。

その答えは、グレーゾーン。お茶はあまり薬やサプリに影響しないといわれていますが、場合によっては、ほうじ茶に含まれる「カフェイン」と「タンニン」が薬の吸収と効果を阻害してしまう可能性があるのです。

  • カフェイン:神経興奮作用によって、抗不安剤・睡眠薬の効果を弱める可能性あり
  • タンニン:鉄剤の服用時、鉄の吸収を阻害する

そのため、基本的に薬やサプリは水かぬるま湯で飲むようにしましょう。

茶葉?ペットボトル?ほうじ茶の選び方

芳しい香りのほうじ茶。妊活のために特出した栄養成分は含まれていないものの、香気成分にリラックス効果やカラダを温める効果が期待でき、ほっとひと息つきたいときにおすすめのお茶です。

ところで、ほうじ茶は、茶葉を急須で煮出すほか、ティーパッグやペットボトルでも手軽に摂取することができますが、妊活中に飲むならどの方法がよいのでしょうか?
最後の総仕上げとして、ほうじ茶の選び方を把握しておきましょう。

ほうじ茶は急須やティーパッグが良い

毎日飲むなど摂取する頻度が高いなら、やはり急須やティーパッグを使ったほうじ茶が◎。
茶葉の量を加減したりじっくりと時間をかけて抽出したりと、好みに合わせたほうじ茶を淹れることができますよ。

また、茶葉を使用すれば余計な添加物を摂取することもありません。
ペットボトルのほうじ茶の多くには、茶葉にビタミンCが添加されています。
ビタミンCと聞くとよいイメージがありますが、実は、l-アスコルビン酸という化学物質で作られたもの。主に、褐変、変色、風味の劣化などを防止するために用いられています。

なお、l-アスコルビン酸は食品全般に対し必要量の使用が認められているものですが、食品添加物は摂りすぎるとカラダに害がでる危険性も。
そのため、やはり急須やティーパッグを使って淹れたほうじ茶がおすすめです。

妊活中は適量のほうじ茶でリラックス

香ばしい香りとあっさりとした味わいが特徴のほうじ茶。
妊活のために特出した栄養成分はほぼ含まれていないものの、リラックス効果やカラダを温める効果があり、ホッとしたいときにおすすめのお茶です。

なお、ほうじ茶にはカフェインが含まれているため飲みすぎには要注意!1日に6杯程度が目安です。
コーヒーや紅茶、煎茶なども併せて飲んでいる場合には、全体で量を調節するようにしてくださいね。

ほうじ茶好きなら妊活中でもOK!適量を守って、気持ちをほっこりとさせましょう。

この記事を作るため参考にした文献・サイト名

監修

  • 柳 寿苗

    管理栄養士
    柳 寿苗(やなぎ としえ)

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