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知っておきたい「ぶどう」の妊活効果。実は特出した栄養なし?

「妊活におすすめのフルーツは、○○、ぶどう、○○…」
妊活に良いフルーツを検索していると、ぶどうをおすすめしているサイトをよく見かけますよね。

でも、ぶどうの一体何が妊活におすすめなのでしょうか? そこで、妊活とぶどうの関係について徹底的に解説してみました。
ぶどうは本当に妊活へ効果的なのか?そして、ぶどうのどんな成分が妊活によいとされているのか?詳しく見てきましょう!

実は妊活に対して特出した栄養成分のないぶどう

フルーツから摂れる栄養といえば、まず思い浮かぶのがビタミンC。
妊活に大敵のストレスを緩和してくれたり、優れた抗酸化作用によって卵子の質の老化を防いで、子宮内膜を着床しやすい環境に整えてくれる、妊活にはとても心強い栄養素です。

そして、ビタミンCがたっぷり含まれていそうなぶどうですが、文部科学省の食品成分データベースによると、可食部100gあたりに含まれているビタミンCはたった2mg(皮付きぶどうで3mg)程度。[参考1]
「えっ!?少ない…。」そう思いますよね。

実は、ほかのフルーツと比べて、ぶどうには特出した栄養成分がありません。妊活に効果のある栄養を期待して食べるのなら、ビタミンC豊富なキウイフルーツや柿、葉酸豊富なアボカドなど、ほかの果物のほうがおすすめなのです。

え?じゃあ、ぶどうに含まれる妊活への有効成分とは?

とはいえ、ぶどうには妊活に効果的な栄養素が一切含まれていない、という訳でもないんですよ。
ぶどうにはどんな有効成分が含まれているのかを詳しくみていきましょう。

ビタミンA/β-カロテン

ぶどうには、体内で必要量に応じてビタミンAに変換されるβ-カロテンが含まれています。含有量は、可食部100gあたり21㎍(皮付きで39㎍)です。
ビタミンAは、子宮内膜の材料となる栄養素のひとつ。不足すると子宮内膜の厚みがなくなり、受精卵が着床しにくくなってしまいます。
また、着床後、胎児の細胞や骨、神経の材料ともなるため、妊活中や妊娠初期には特に重要な栄養素です。

妊娠初期にビタミンAの過剰摂取が続くと、胎児に奇形のリスクが高まるとも言われています。
しかし、ぶどうに含まれているβ-カロテンなら、体内でビタミンAが不足している時のみビタミンAに変換されるので、過剰摂取となる心配はありません。
ビタミンAを摂取する際は、ぶどうなどの果物や野菜に多く含まれるβ-カロテンを上手に利用することがポイントですよ。

カリウム

ぶどうには、可食部100gあたり130mg(皮付きで220g)のカリウムが含まれています。
カリウムは体内の余分な塩分(ナトリウム)を排出してくれる働きがあります。
体内に取り込むナトリウムが多いと、体は濃度の均整を取ろうとして体内へ水分をため込みます。つまりむくみの原因になるんですね。
むくみは身体を冷やす原因の1つ。ぶどうからカリウムを摂取することで体内の余分なナトリウムを排出して、むくみにくい身体の状態にしておきましょう![参考2]

糖質

ぶどうは果糖やブドウ糖などの糖質が主成分。
果糖やブドウ糖は、脳の重要なエネルギー源で、不足すると疲労感や集中力の低下をもたらしたり、最悪のケースでは意識障害を起こしたりなど、カラダにとって大切な栄養素です。
そのため、ぶどうは疲労回復にぴったりの果物。毎日の家事や仕事、妊活で「疲れたな…」と感じたときのエネルギー補給におすすめですよ。

ぶどうの種類により、含まれる成分やポリフェノールにもばらつきが

ところで、ぶどうには、巨峰やピオーネ、デラウェアやマスカットなど、大きさにも色にもさまざまな種類がありますよね。
すべての種類に同じような栄養成分が含まれているのでしょうか。そこで、ぶどうの種類についても確認しておきましょう。

ポリフェノールは黒系や赤系のぶどうに多い

ぶどうは、大きく分けて黒、赤、緑の3種類に分けられます。
黒は、ぶどうの王様とも呼ばれる巨峰やピオーネ、赤は甲斐路(かいじ)やクイーン、デラウェア、緑はマスカットやロザリオ・ビアンコなどが代表的な品種です。
未熟な時期のぶどうの果皮はすべて緑色をしており、成長する過程で黒や赤の色素が作られていくため、基本的な栄養成分にあまり違いはありません。しかし、ポリフェノールの含有量が大きく異なります。

ポリフェノールは妊活にも効果的な成分

ポリフェノールとは、老化やがんなどを引き起こす活性酸素の発生や働きを抑制するとして、注目を集めている抗酸化成分のこと。
ぶどうの皮や種に豊富に含まれていて、色素の薄い緑色系のぶどうよりも、黒系や赤系に多く含まれているのです。
ポリフェノールは、妊活にも効果的な成分なんですよ。ポリフェノールについては、後の項目で詳しくご説明しますね。

高栄養価食品、レーズン

皮ごとしっかり乾燥させて作られたレーズンもぶどうの代表選手。ぶどうの甘さと旨味がギュギュっと詰まっていて、とてもおいしいですよね。
レーズンは果実を濃縮したものなので、カリウム、カルシウム、鉄などのミネラル、食物繊維などが豊富な高栄養価食品です。手軽に食べられるため、妊活中のおやつにもおすすめですよ。
ただし、濃縮してある分カロリーもかなり高めです。100gあたり301kcalもあるので、食べすぎには要注意!

ぶどうに含まれる抗酸化成分が妊活へ効果を!

ここからは、ぶどうの皮や種に含まれる抗酸化成分、ポリフェノールと妊活の関係について解説していきますね。
特徴的な基本栄養素が無いぶどうですが、近年はこのポリフェノールを豊富に含む果物として注目を集めています。
ポリフェノールは、妊活に一体どのような影響を及ぼすのでしょうか。それでは早速、みていきましょう。

卵子の老化を予防するアントシアニン

ぶどうの皮や種には、アントシアニンが豊富に含まれています。
アントシアニンとは、ポリフェノールの一種で、体内の活性酸素を取り除く抗酸化作用をもった成分です。
活性酸素は、本来細菌やウイルスからカラダを守るためにつくり出される物質なのですが、ストレスやアルコール摂取、喫煙や激しい運動、紫外線などによって増えすぎることがあります。
活性酸素が過剰に発生すると、細胞を傷つけて老化や病気などを進行させてしまうことにも。
活性酸素の影響を受けるのは、卵子も例外ではありません。過剰な活性酸素によって卵子が攻撃を受け、老化が早まってしまうのです。[参考3]

ぶどうのアントシアニンが活性酸素の働きを抑える

アントシアニンには、そんな活性酸素の発生や働きを抑制し、活性酸素そのものを体内から取り除く作用があるのです。
つまり、ぶどうに含まれるアントシアニンが活性酸素による卵子の質の低下を防ぎ、妊娠しやすいカラダづくりのためのサポートをしてくれるという訳なんです。

すでにお話した通り、アントシアニンを含むポリフェノールは、黒系や赤系のぶどうにより多く含まれています。
マスカットなどの緑色のぶどうは香りが高く甘みの強いとてもおいしいぶどうですが、アントシアニンの効果を期待するなら、巨峰や甲斐路、デラウェアなどの色の濃いぶどうを選ぶことをおすすめします。

ぶどうは果糖も多いから、妊活では気をつけて!

ストレスに生活習慣や食生活の乱れなど、活性酸素を発生させてしまう要素って普段の生活の中に結構溢れていますよね。
「妊娠しやすいカラダづくりのため、ぶどうをたくさん食べて、アントシアニンをしっかり摂取しよう!」といきたいところですが、実は、ぶどうを摂取しすぎることも妊活の悪影響となってしまいます。
そこで、ここからは妊活にぶどうを食べる際の注意点を確認しておきましょう。

食べすぎ注意!ぶどうは糖質やカロリーが高め

すでにお話した通り、ぶどうの主成分はブドウ糖と果糖です。
栄養成分を確認してみると、ほかの果物に比べてビタミンやミネラルの含有量が低く、その割にブドウ糖と果糖の高さが目立ちます。

キウイフルーツとぶどうの栄養成分を比較

例えば、キウイフルーツとぶどうの栄養成分を比較すると、可食部100gあたりのビタミンCは緑肉種のキウイフルーツに69mg、黄肉種のキウイフルーツに140mgあるのに対して、ぶどうはたった2.0mg(皮付きで3.0mg)しかありません。
一方、果糖は、緑肉種のキウイフルーツに4.0g、黄肉種のキウイフルーツに5.7gなのに対して、ぶどうは7.1g(皮付きで8.7g)と、ぶどうの方が多く含まれているのです。
さらに、カロリーについて比較しておきましょう。それぞれ緑肉種のキウイフルーツ53kcal、黄肉種のキウイフルーツ59kcal、ぶどう59kcal(皮付きで64kcal)です。

ビタミンCの含有量

キウイフルーツ(緑肉種)69mg
キウイフルーツ(黄肉種)140mg
ぶどう3mg

果糖の含有量

キウイフルーツ(緑肉種)4.0g
キウイフルーツ(黄肉種)5.7g
ぶどう7.1g

カロリー量

キウイフルーツ(緑肉種)53kcal
キウイフルーツ(黄肉種)59kcal
ぶどう59kcal

こうして比較してみると、ビタミンCが極端に少ない割に、果糖やカロリーが高めであることがわかりますよね。

果糖の摂りすぎは不妊体質に

果糖は脳の重要なエネルギー源となるものですが、摂りすぎると肥満や生活習慣病の原因になり、さらに、妊活にもあまりよくない影響を与えてしまうので注意が必要です。
通常、糖質を摂取すると血糖値が上がるため、インスリンが分泌されて血糖値を下げる働きを行ないます。しかし、果糖の場合は、インスリン分泌を強く促すこともありません。
そのため、過剰に摂取すると果糖の過剰摂取により、中性脂肪の増大や肥満をきたすおそれがあります。[参考4]

果糖は体内で代謝される際に大量の活性酸素を発生させる

また、果糖はぶどう糖に比べて糖化反応を起こしやすく、代謝の過程で大量の活性酸素が発生するとされています。
果糖の摂りすぎは、生活習慣病や細胞の老化を進めてしまいかねないため、妊娠しにくい身体となってしまうのです。
甘くておいしいぶどうですが、果糖の多い果物であることを意識して食べすぎないようにしましょう。[参考5]

ぶどうのレスベラトロールで妊活によい影響?真偽に迫ります

ぶどう科のぶどう、ツツジ科のベリーなどに多く含まれている、レスベラトロールってご存知ですか?
レスベラトロールとは、ぶどうの渋みのもとになっている、強い抗酸化力を持つポリフェノールの一種です。
アメリカの研究チームにより、「長寿遺伝子を活性化させて寿命を延ばす」と発表されたことで、世界的に注目されている成分なんですよ。

レスベラトロールは長寿遺伝子を活性化させる?

長寿遺伝子(サーチュイン遺伝子)には、細胞の老化を遅らせて若さを保つ働きがあります。
この長寿遺伝子、実は、すべての人が生まれたときから持っている遺伝子なのですが、何もしなければ眠ったままで力を発揮することがありません。
しかし、レスベラトロールを摂取することで、長寿遺伝子が目覚め、その働きが活性化されることがわかってきたのです。

そもそも赤ワインやぶどうに含まれる含有量が少ない

しかし、レスベラトロール長寿遺伝子(サーチュイン遺伝子)に対するの効果はあくまでサルを使った動物実験によるもので、人体臨床実験による結果ではありません。
また、レスベラトロールは赤ワイン1本にわずか1mg程度しか含まれておらず、動物実験で実証された効果を得るためには、かなり大量の赤ワインやぶどうを毎日摂取することが必要となります。
そのため、レスベラトロールの効果を期待して赤ワインやぶどうを摂取しても、効果があらわれにくいのが現状のようです。

レスベラトロールによる妊活効果に期待が持てる研究結果も

その一方で、レスベラトロールを摂取することで卵子の質が改善される、といった研究報告も上がってきています。[参考6]
レスベラトロールの妊活効果を期待したい場合、レスベラトールが含まれたサプリメントで摂取するほうが効率的です。
ただ、摂取の時期によっては着床を妨げることがあるようなので、自己判断で取り入れる場合は十分に注意してくださいね。

ぶどう好きな人は妊活へもぜひ!

今回は、妊活とぶどうの関係を深く探っていきました。
「ぶどうは妊活によい」という情報がWeb上に流れているものの、実際のところ、ぶどうは糖質が多く、妊活時に積極的に摂り入れたい栄養素があまり含まれていない果物です。
栄養成分的には、キウイフルーツや柿、アボカドなど、ほかの果物の方がおすすめ。
しかし、ぶどうにはポリフェノールが豊富に含まれており、妊活への効果がまったくのゼロという訳ではありませんよ。

ぶどうが好きな人は、ぜひ皮ごと、そしてなるべく巨峰やデラウェアなど、色の濃い黒系や赤系のぶどうを妊活に上手に摂り入れてみてはいかがでしょうか。
ただし、糖質過多となってしまうため、食べすぎは禁物です!適切な量をおいしくいただきましょう。

この記事を作るため参考にした文献・サイト名

監修

  • 柳 寿苗

    管理栄養士
    柳 寿苗(やなぎ としえ)

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