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妊活の闇…いちじくの「鉄分豊富」は大嘘!効果の真相を大解説

多くのサイトで「妊活フルーツ」の称号を得ているいちじく。でも、その情報は間違いだらけかも。
そこで、妊活といちじくの真の関係性を徹底解説します。いちじくの正しい知識を身につけて、上手に妊活へ活用していきましょう。

いちじくは「妊活フルーツ」ではない!?

冒頭でもお伝えした通り、インターネット上には「いちじくがホルモンバランスを整えてくれる」「いちじくが妊孕力を高めてくれる」、といった内容のサイトがたくさん。

確かに、いちじくは栄養豊富な果実ではありますが、実のところ、多くの記事に書かれている内容ほど妊活に特化した効果はありません。

では、なぜいちじくは「妊活フルーツ」と称され、妊活によいとする情報が幾多も見受けられるのか、そしてそこで語られている内容は事実なのか、次項より気になる真相に迫っていきましょう。

「いちじく= 妊活フルーツ」になったワケ

まずは、どうして「いちじくが妊活によい」といわれるようになったのか、その理由を確認していきましょう。多くのサイト上で書かれているいちじくの妊活効果は主に次の3つです。

  • いちじくには「鉄分」と「カルシウム」が豊富なため、妊活へ良い効果が期待できる
  • いちじくには女性ホルモンと似た働きをする「植物性エストロゲン」が豊富に含まれているため、ホルモンバランスを整える効果が期待できる
  • いちじくには妊活に必要な栄養が豊富に含まれているため、妊娠力を高める効果が期待できる

これらの情報はそれぞれ真実なのか、さっそく真相に迫っていきましょう。

いちじくに含まれる「鉄分」や「カルシウム」は実は少ない

某まとめサイトや、お医者さんの監修が行なわれているサイトで見かける「いちじくには鉄分やカルシウムが豊富なので妊活に効果的」の文字。

…実はこれ、「完全に誤り」です。つまりこの情報はウソ。それでは、なぜこの情報がウソと言えるのか、解説していきますね!

いちじくに含まれる鉄分とカルシウムを確認しましょう

まずは、いちじくに含まれる鉄分とカルシウムを、文部科学省が運営している 「食品成分データベース」で見てみましょう。 [参考1]

いちじくの可食部100gあたりに含まれる栄養素

鉄分カルシウムカロリー
生いちじく0.3mg26mg54kcal
乾燥いちじく1.7mg190mg291kcal

また、生いちじく1個あたりの可食部は、およそ72g。その一方で乾燥いちじくは、1個あたりおよそ7gと言われています。 [参考2]

妊活中の女性や男性に必要な鉄分とカルシウムの量

続いて、厚生労働省発表の「[PDF]日本人の食事摂取基準(2015年版)の概要」を参考に、1日で必要な鉄分やカルシウムの量を確認してみましょう。 [参考3]

1日あたりの鉄分摂取推奨量

女性(月経あり)男性
18~49歳10.5mg7.0~7.5mg

1日あたりのカルシウム摂取推奨量

女性男性
18~49歳650mg650~800mg

そして、1日に必要な鉄分とカルシウムの充足率を、いちじく1個あたりで換算すると以下のようになります。

女性(18~49歳)の1日あたりの栄養素充足率

鉄分カルシウム
生いちじく
1個あたり
約2% 約3%
乾燥いちじく
1個あたり
約1%約2%

男性(18~49歳)の1日あたりの栄養素充足率

鉄分カルシウム
生いちじく
1個あたり
約3% 約2%
乾燥いちじく
1個あたり
約2%約2%

なんとビックリ!ぜーんぜん足りません(泣)
上記の通り、1日に必要な鉄分やカルシウムの推奨量と比較すると、いちじくに含まれる鉄分やカルシウムは非常に少ないことがわかります。

また、乾燥いちじくは小さい分、たくさん食べることができますが、ドライフルーツは食べ過ぎると糖質やカロリー過多に。妊娠しやすいカラダからは遠ざかってしまいます。

鉄分の体内吸収率は、非ヘム鉄の場合2~20%に

さらに、鉄分には比較的体内へ吸収されやすい食肉たんぱく質由来の「ヘム鉄」と、吸収されにくい植物性由来の「非ヘム鉄」の2つに分かれています。
いちじくに含まれている鉄分は、体内に吸収されにくい植物性由来の「非ヘム鉄」のほう。非ヘム鉄の場合の体内吸収率は約2~20%程度です。[参考4]

もともと鉄分自体が体内吸収率の悪い栄養素ですが、その中でもいちじくに含まれる鉄分は「非ヘム鉄」。体内へ吸収される鉄分は、いちじく1個あたり実質1%以下になります。

妊活情報はすべて鵜呑みにせず、本当に信用できる情報か吟味しましょう

お医者さんが監修を行なっているサイトや、鍼灸院さんのブログなどでも「鉄分が豊富」などと書かれていたりしますが、大切なのは正しい情報を見極めること。
例えば、当サイト「neen食事栄養情報」のように、官公庁(厚生労働省や国家機関)のデータや、論文などの情報元から引用されているか確認するのもひとつのポイントです。

インターネット上の妊活情報を実践する前に「これは本当に正しい情報?」「ちゃんと根拠も書かれているかな?」と今一度振り返り、本当に妊活に役立つ情報を参考にしましょうね!

根拠がない「 いちじくには妊活によい植物性エストロゲンが含まれている」

「いちじくには女性ホルモンと似た働きをする”植物性エストロゲン”が豊富に含まれているため、ホルモンバランスを整える効果が期待できる」
次はこちらの妊活効果の真相を確かめていきましょう。

確かに、植物性エストロゲンは「フィトエストロゲン」とも呼ばれ、女性ホルモンのエストロゲンと似た働きをすることがわかっています。しかし、問題なのは、いちじくにその植物性エストロゲンが含まれている、と断定しているところ。

実は、数多くの文献や論文、動物実験を含めた研究結果などを徹底的に調査した結果、「いちじくには植物性エストロゲンが含まれている」とするエビデンスがひとつも確認できませんでした。
つまり、この妊活効果の真相はグレーゾーン。現在のところ、根拠のない情報なのです。

「いちじくには植物性エストロゲンが含まれている」と言われている理由を考察

では、確実な根拠がないのにもかかわらず、どうして「いちじくには植物性エストロゲンが含まれている」といわれるようになったのでしょうか。
その理由を探るために、まずは、いちじくの形態について理解を深めていきましょう。

実だと思って食べている部分は「花」

いちじくは、漢字で「無花果」。「花が無い」と書きますが、本当に花が咲かないわけではありません。
実は、通常食べているいちじくの「実」の部分は、厳密には「実」ではなく、いちじくの「花」にあたる部分。
花が実のなかに隠れて咲き、外から花が見えないため「無花果」と名づけられたのです。

植物性のホルモンが植物性エストロゲンに?

花の部分には「おしべ」と「めしべ」が含まれており、わたしたちはいちじくの生殖器官にあたる部分を食べていることに。そして、花には植物性のホルモンが含まれていることから、いつしか「植物性のホルモン=植物性エストロゲン」と誤認されるようになった可能性が。

その結果、「いちじくには植物性エストロゲンが含まれている=妊活によい」という情報が流布したのだと推測できます。
また、いちじくが、種に微量の植物性エストロゲンを含んでいる「ザクロ」と似ていることも上記の情報の流布に関係しているのかもしれません。

植物性エストロゲンの有無は慎重な判断を

いずれにせよ、いちじくが植物性エストロゲンを含んでいると証明する文献などは現在のところ見つかっていません。
そのため、いちじくに植物性エストロゲンによる妊活効果があるかどうかは、今後の研究結果の報告を待ちつつ慎重に判断していきたいところです。

いちじくの栄養価と妊活に期待できる働き

「いちじくには妊活に必要な栄養が豊富に含まれているため、妊娠力を高める効果が期待できる」
続いては、こちらの妊活効果の真相を確認していきましょう。

結論から言うと、「不老長寿の果実」とも称され古くから食されてきたいちじくは、栄養豊富な食材。妊活にもうれしい働きをする栄養成分が含まれており、この情報はホント。
主に次のような栄養素が含まれています。

  • 葉酸
  • ビタミンE
  • マグネシウム
  • カリウム
  • 食物繊維、など

そして、いちじくに期待できる妊活効果は次の通りです。

  • 葉酸の補給
  • 整腸作用
  • 抗酸化作用

では、ひとつずつ詳しく確認していきましょう。

妊活必須栄養素の葉酸を補給

葉酸は、胎児の脳や神経、脊髄を形成する妊娠のごく初期から極めて重要な栄養素です。
妊娠前からの十分な葉酸摂取によって、胎児の神経管閉鎖障害の発症リスクが低減することが明らかとなり、厚生労働省では妊娠可能な年齢の女性に次の通り積極的な葉酸摂取を勧告しています。[参考5]

  • 葉酸の摂取推奨量:食事から240㎍+サプリメントなどから付加的に400㎍

通常サイズのいちじく(85g、可食部72g)には、およそ16㎍の葉酸が含まれていますよ。

  • 通常サイズのいちじく(可食部72g):16㎍

妊活必須の栄養素である葉酸を、いちじくからも補えるのはうれしいポイントですよね。
ただし、摂取推奨量から考えると、いちじくの葉酸が特出して高いわけではない点には注意してください。いちじくの葉酸含有量を考えれば、ほかの食品などからも葉酸を摂取することは必須でしょう。

食物繊維で腸内環境を良好に

いちじくには、水溶性食物繊維(ペクチン)と不溶性食物繊維の両方が含まれているので、腸内環境を整える効果が期待できます。
腸内環境を良好に保つことは、妊活の必須条件。腸内環境が整っていなければ、せっかく妊娠力を高めるバランスのよい食事を摂っていても、その栄養がしっかりとカラダへ吸収されなくなってしまいます。

また、腸にはカラダの免疫細胞のなんと6~7割が集結。最大の免疫器官となっているため、腸内環境が乱れてしまうと免疫力も低下して、風邪などの感染症にかかりやすくなってしまいます。
栄養の消化吸収を高め、細菌やウイルスに負けない妊娠体質になるために、ぜひいちじくの食物繊維パワーを活用しましょう。

抗酸化作用で卵子と精子の老化を予防

いちじくに含まれているビタミンEやポリフェノールの一種であるアントシアニンには優れた抗酸化作用があり、卵子や精子の老化を防ぐ効果が期待できます。
そもそも、老化を引き起こす要因となっているのが「活性酸素」。

活性酸素は、体内に侵入したウイルスや細菌を撃退する免疫機能として働く一方、ストレスや偏った食生活などによって過剰発生すると、正常な細胞や遺伝子までも傷つけて酸化させてしまうとてもやっかいな物質。

卵子や精子も活性酸素の攻撃を受けると酸化し、老化が進んでしまいます。
そこで、ビタミンEやアントシアニンが効果を発揮。活性酸素を抑制し、卵子と精子の老化を防いで質を高める働きをしてくれるのです。

妊活中のいちじくおすすめ食べ合わせ

ここからは、いちじくの妊活パワーをより発揮させる効果的な食べ合わせをご紹介します。いちじくに○○をプラスして、妊娠力を高めていきましょう!

いちじく×発酵食品で整腸作用をパワーアップ

納豆や味噌、チーズやヨーグルト、キムチなどの発酵食品には、腸内の悪玉菌を減らしたり、善玉菌のエサとなって善玉菌を活性化するなど、腸内環境のバランスを整える働きがあります。

そのため、いちじくの食物繊維と発酵食品のWパワーで整腸作用がパワーアップ。栄養素の消化吸収が高まって妊娠力を高める効果が期待できますよ。
また、腸が健康になることで免疫力もアップするので、感染症予防にも効果的。妊活中からなるべく薬の服用は避けたいものです。いちじく×発酵食品で、細菌やウイルスに負けないカラダづくりをしましょう。

いちじく×ビタミンCで抗酸化作用をパワーアップ

ビタミンCはビタミンA・ビタミンEと共に「ビタミンACE(エース)」とも呼ばれ、抗酸化ビタミンのひとつ。とくに、ビタミンC・ビタミンEを一緒に摂取することで、相互作用により抗酸化力が高まるといわれています。

つまり、いちじくに含まれるビタミンEとビタミンCを多く含む食材の強力タッグで、抗酸化作用がパワーアップ。卵子や精子の老化を防ぎ、質を高める効果が期待できます。

ビタミンCを多くふくむ食材

  • アセロラ
  • キウイフルーツ
  • レモン
  • パプリカ(赤・黄)
  • ブロッコリー、など

いちじくのビタミンEと組み合わせて、抗酸化力を高めていきましょう。

いちじく×たんぱく質で吸収率をパワーアップ

いちじくを切ると、中から白い液体が出てくることをご存知ですか?
この白い液体の正体は、「フィシン」というたんぱく質分解酵素。肉や魚といったたんぱく質を多く含む食材と一緒に摂取すると、たんぱく質が分解されやすくなり、体内への消化吸収を高める働きがあります。

たんぱく質は、カラダの構成に必要不可欠であり、子宮内膜の材料となったり、卵子や精子の主成分ともなっている重要な栄養素。いちじくと一緒に摂ることで、カラダへの吸収をパワーアップさせましょう!

たんぱく質を多く含む食材

  • 肉類
  • 魚類
  • 大豆・大豆製品(納豆・豆腐など)
  • 乳製品(牛乳・チーズ・ヨーグルトなど)
  • たまご、など

ドライいちじくの食べすぎに要注意

「ドライいちじくなら栄養価アップで妊活によりおすすめ!」
インターネット上には、ドライいちじくがより妊活に効果ありとする記事も多く見受けられます。

確かに、生のいちじくを凝縮したドライいちじくは、栄養価が高くなっているのも事実。生のいちじくと比べて、食物繊維はおよそ5倍、カルシウムやマグネシウムなどのミネラルも4~6倍ほどにアップします。
しかし、ドライいちじくはカロリーや糖分もギュギュっと凝縮されているため要注意!

生のいちじくは、100gあたり54kcal、糖質も100gあたり12.4gと低めなものの、ドライいちじくになると、100gあたり291kcal、糖質も5倍ほどに増えてしまいます。
そのため、食べすぎるとカロリーオーバーや糖質オーバーとなってしまうことに。

糖分の摂りすぎで卵子や精子の質の低下に繋がる

なお、糖分をとりすぎると「糖化」を促してしまいます。
糖化とは、「カラダのコゲ」とも呼ばれ、食事などから摂った余分な糖質が体内でたんぱく質と結合し、変性したAGEsという物質が発生させ、AGEsが蓄積することによって細胞などを老化させてしまう現象のこと。

精子や卵子も主にたんぱく質からできているため、糖化すると質の低下につながってしまいます。
ドライいちじくのよい情報ばかりを鵜呑みにせず、食べすぎないように注意しましょう。

ドライいちじく&生いちじくのメリット・デメリット

ドライいちじくの話が出たところで、生いちじくとドライいちじく、それぞれのメリットとデメリットについても確認しておきましょう。

生&ドライいちじく共通のメリットとデメリット

まずは、生いちじくとドライいちじくに共通するメリットとデメリットについても把握しておきましょう。

いちじく共通のメリット

  • 高い整腸作用のある水溶性食物繊維のペクチンを含む
  • 抗酸化作用のあるポリフェノール、アントシアニンを含む

いちじく共通のデメリット

  • 食べすぎるとカラダに害が出る可能性も
    ⇒たんぱく質分解酵素により舌や唇がヒリヒリする
  • 食物繊維の摂りすぎで下痢になる、など

ドライいちじくのメリットとデメリット

次に、ドライいちじくのメリットとデメリットは次の通りです。

メリット

  • 食物繊維やミネラルなどが凝縮されて栄養価アップ
  • 保存性がよく、季節を問わず入手可能
  • 甘みも凝縮されているため、お菓子やデザート代わりにしても満足感を得やすい

デメリット

  • 甘みが凝縮されている分、カロリー・糖質が高い
  • ビタミンCや葉酸の含有量が減少してしまう

生いちじくのメリットとデメリット

続いて、生いちじくのメリットとデメリットは次の通りです。

メリット

  • 糖質が少なめで、血糖値を上げにくい
  • ビタミンCや葉酸を摂取できる

デメリット

  • たんぱく質分解酵素のフィシンの働きにより、食べすぎると舌や唇がヒリヒリする
  • 完熟していないいちじくは胃を刺激し、胃痛・腹痛・おう吐を引き起こす場合も

ドライ&生いちじくの1日の摂取目安量

ドライいちじくと生いちじくは、それぞれメリットとデメリットがありますが、効果を最大限得るためには、適切な量を食べることがポイント。
そこで最後の総仕上げに、いちじくの摂取目安量を押さえておきましょう。

ずばり、ドライいちじく・生いちじくの摂取目安量は、ともに1日2個程度まで。それ以上は、食べすぎとなる可能性があります。

とくに、ドライいちじくは気軽に食べられるため要注意!つい、パクパクと口へ運んでしまいがちですが、食べすぎると下痢などを起こしやすくなったり、糖質過多となり糖化のリスクの上昇や糖尿病の危険性、それに伴う生殖機能の低下の可能性が出てきてしまいます。

1日2個程度のいちじくで、健康効果、妊活効果をしっかりと発揮させましょう。

栄養豊富ないちじくを妊活に活用するのもアリです

「いちじくには植物性エストロゲンが含まれているため妊活によい」
この情報は、事実であると断定できる文献や研究結果がない状態であり、現在のところ不確かなもの。植物性エストロゲンの効果はあまり期待しない方がいいでしょう。
また、「鉄分やカルシウムが豊富」も事実と異なると言わざるを得ませんでした。

ただし、いちじく自体はおいしくて栄養豊富な果実。食物繊維やビタミンC、葉酸やポリフェノールなど、妊活にもうれしい効果が期待できる栄養成分を含んでいます。
生いちじく、ドライいちじくともに、1日2個を目安にして、妊活へ活用してみてはいかがでしょうか。

この記事を作るため参考にした文献・サイト名

監修

  • 柳 寿苗

    管理栄養士
    柳 寿苗(やなぎ としえ)

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