栄養

妊活成功のカギは「鉄分」にあり!鉄分の作用をチェックしよう

妊活に取り入れたい代表選手「鉄分」。
鉄分は、妊娠の成立を支える重要な役割を果たすもので、毎日積極的に摂取したい栄養素のひとつです。
でも、「鉄分」といわれても、実際に取り入れようとするとなかなか考えてしまいますよね。
どんな食材に含まれ、どのように摂取すればいいの?そんな悩みを抱える女性は多いものです。
そこで、鉄分が妊娠に与える影響から、鉄分を多く含む食材、効率のよい摂取方法など、「鉄分」をまるごと徹底解説します。
毎日の食事に「鉄分」を取り入れた妊活を。そのために、鉄分についてしっかりマスターしてしまいましょう!

鉄分が妊活や不妊へどう影響するのでしょうか?

妊娠しやすいカラダづくりのために欠かすことのできない「鉄分」。でも、具体的には、どのように影響を及ぼしているのでしょうか。
まずは、鉄分と妊娠がどのように関わりあっているのか、その関係性を詳しく探っていきましょう。

子宮内の環境を整える鉄分

鉄分には、子宮内膜の材料になるという重要な役割があります。粘膜とは、クッションのようなもの。
体内の鉄分が十分に足りていると、ふかふかの厚い粘膜がつくられますが、不足しているとかたくて薄い粘膜となってしまいます。
妊娠するためは、子宮内膜が着床しやすいように厚くなることが大切。
そのため、厚くてふかふかの粘膜をつくり、子宮内の環境を整える鉄分は、妊活成功のカギをにぎる重要な働きをするのです。

卵細胞の成長を妨げる!?鉄分不足

鉄分は、卵細胞が健全に成長するための欠かせない成分でもあります。
しかし、不足や過剰によって、体内の細胞を酸化して傷つける「活性酸素」が過剰に増えてしまい、卵子もそのダメージを受けしまう恐れがあります。
そのため、慢性的な鉄分の過不足によって、健康な卵細胞が育ちにくくなり、結果、不妊を招いてしまう可能性があるのです。[参考1]

【鉄分】が多い食事や食材は?

妊娠しやすいカラダづくりのため、必須の栄養素である鉄分。子宮内の環境を整え、健全な卵細胞の成長を支える鉄分を、普段の食事から積極的に取り入れたいものです。
そこで、鉄分を多く含む食材にはどのようなものがあるのか、詳しく見ていきましょう。

2種類の鉄分「ヘム鉄」「非ヘム鉄」

鉄分とひとことでいっても、実は、たんぱく質と結合している「ヘム鉄」とたんぱく質と結合していない「非ヘム鉄」の2種類が存在していることをご存じですか?

ヘム鉄は、レバーや牛肉といった動物性の食品に多く含まれている鉄分で、非ヘム鉄は、ほうれん草やひじきといった植物性の食品に多く含まれている鉄分。この2つの大きな違いは、「体内での吸収率」です。
厚生労働省が提供する健康情報サイトによると、ヘム鉄の吸収率が15%~35%なのに対して、非ヘム鉄の吸収率は2%~20%ほど。また、健康な人であれば食事から約10%~15%の鉄が吸収されるといわれています。[参考2]
「ヘム鉄」「非ヘム鉄」を多く含む食材は以下のとおり。

ヘム鉄を多く含む食べ物

  • 牛、豚、鶏レバー
  • 牛肉(赤身)、豚、鶏、鴨肉
  • コンビーフ
  • カツオ
  • まぐろ
  • サバ
  • イワシ
  • 煮干し
  • アサリ

など。

非ヘム鉄を多く含む食べ物

  • ほうれん草
  • 小松菜
  • 菜の花
  • ひじき(乾燥)
  • 大豆
  • 大豆製品(納豆など)
  • 切り干し大根

など。

バランスのよい食事で必要栄養素をとろう

鉄分不足を防ぐためには、吸収率のよい「ヘム鉄」をより意識して摂取することをおすすめします。しかし、動物性由来のヘム鉄だけ、植物性由来の非ヘム鉄だけと偏った摂取は禁物。
鉄分は、緑黄色野菜や果物などに多く含まれる「ビタミンC」と一緒に摂取することで、より吸収が高まるとされています。また、ほうれん草やブロッコリーなどに多く含まれる葉酸は赤血球の生成に必要な大切な栄養素のため鉄と合わせて摂ることがおすすめです。
食事に含まれる栄養素は、相互作用で力を発揮するのです。
さまざまな栄養素をしっかりととるために、鉄分を含む食材を意識しつつ、動物性食品と植物性食品をバランスよく食べるようにしましょう。

鉄分についておさらいしましょう

妊活成功のカギを握る栄養素のひとつ、「鉄分」。
厚生労働省の健康情報サイト「e-ヘルスネット」によると、毎日におよそ1mgの鉄が失われていくとのこと。さらに、女性の場合は、毎月の月経からも鉄が失われてしまうので、多くの人が慢性的な鉄分不足に陥っている状態なのだそうです。
毎日失われていく鉄分を補うためには、食事から取り入れることが必要。でも、そもそも、鉄分とは具体的にどのような働きをするもので、どのくらい摂取する必要があるのでしょうか。
鉄分についてより詳しく知るために、今までのおさらいも踏まえながら、その正体を深く探っていきましょう。

鉄分とは

鉄分とは、成人の体内に約3~4g存在し、主に赤血球をつくったり、体内に酸素を運んだりといった重要な働きをします。また、健全な子宮粘膜の形成や卵細胞の成長を支える妊活にも必要不可欠なミネラル分。
ただし、吸収率は食べた鉄分のうちの10%~15%程度であり、ほかの栄養素に比べ欠乏しやすいのが特徴です。
また、鉄分には動物性食品に多く含まれる「ヘム鉄」と植物性食品に多く含まれる「ヘム鉄」の2種類が存在します。

鉄分がもたらす体への働きって何?

体内の鉄分は、約70%が血液中の赤血球をつくっている「ヘモグロビン」の成分となり、約25%は貯蔵鉄となって肝臓や骨髄などにストックされ、ヘモグロビンが不足した際に利用されます。
ヘモグロビンは、呼吸によって体内に取り込まれた酸素と結びつき、酸素をカラダのすみずみまで運ぶとても重要な働きをするもの。鉄分はそんなヘモグロビンの構成に欠かせないものなのです。
そのほかにも、

  • 子宮粘膜の形成や卵細胞の成長を助ける
  • 疲労回復
  • 免疫力向上
  • 感情のコントロール

などといったさまざま働きをしている鉄分。
別名「微量ミネラル」ともいわれ、体内含有量や1日あたりの摂取量は非常に少ない栄養素ですが、私たちのカラダとココロのエネルギーを生み出してくれる偉大な存在なのです。

1日あたりに必要な摂取量ってどれくらい?

つづいて、女性の場合、1日にどれくらいの鉄分摂取が必要なのか見ていきましょう。
厚生労働省が発表しているデータをもとに、年齢別、月経の有無別に分類し、1日あたりの必要量、摂取量、上限量を分かりやすくまとめました。

女性の推奨量(月経あり)

18~49歳10.5mg

女性の推奨量(月経なし)

18~29歳6.0mg
30~49歳6.5mg

男性の推奨量

18~29歳7.0mg
30~49歳7.5mg

このデータを見ると、成人女性の場合は1日当たり10.5mgほどの鉄分摂取が理想的であることがわかります。

あなたは大丈夫?鉄分の不足を自分でチェック

健康診断などで「貧血」といわれないかぎり、あまり気にすることのない鉄分ですが、実は、「隠れ貧血(潜在的な鉄欠乏)」の人がかなり多くいるといわれています。
隠れ貧血を見分けるカギとなるのが、「フェリチン」という値。
フェリチンとは、体内に蓄積されている鉄分(=貯蔵鉄)の量のこと。体内の鉄分が不足するときは、貯蔵鉄から補われて血液中に供給されています。
しかし、通常の血液検査で調べられているのは、赤血球に含まれるヘモグロビンや血液中の赤血球の割合を示すヘマトクリットなどの数値のみ。そのため、フェリチン(貯蔵鉄量)が不足していても気づくことができません。
このように、検査などでは貧血症状が出ていないにもかかわらずフェリチンが不足している状態を「隠れ貧血」といいます。

フェリチンが不足すると妊娠率に関わる可能性が

毎月の月経でただでさえ鉄分が不足しやすい女性は、フェリチンが不足した隠れ貧血に陥りやすいといわれています。
また、フェリチン不足は妊活していてもなかなか妊娠しないという人のひとつの特徴でもあるようです。
アメリカの不妊治療現場では、フェリチン値が40ng/ml以下では、着床不全、早産、流産のリスクが高くなると言われ、少なくとも40ng/ml以上になるまでは、妊娠しにくいと考えられています。[参考3]
貧血といわれたことがないからと安心していても、実は隠れ貧血かもしれません。ぜひセルフチェックしてみましょう!

  • 立ちくらみやめまいを感じる
  • よくあくびがでる
  • 爪の色が白い。または割れることがある
  • 爪が反り返ったりへこんだりしている
  • 動機や息切れを感じやすい
  • あっかんべえをしたときに、下まぶたの色が白い
  • 健康のために肉を控えている
  • 肌や髪のツヤが気になる
  • 朝起きるのがつらい
  • 手足が冷えやすく、頭痛や肩こりがある
  • よくアザができる

ひとつでも当てはまると、鉄分不足、隠れ貧血の可能性が。なんとなく気になっていた体の不調も、鉄分を意識して摂取することで改善されるかもしれません。

鉄分を効率よく摂取して妊活へ役立てよう

一般的に、食事からとる鉄分の約90%が吸収率の低い「非ヘム鉄」からといわれています。また、「ヘム鉄」も、ほかの栄養素などと比べると吸収率はあまり高くありません。
そのため、より効率よく鉄分を摂取するためには、「吸収率を高める栄養素と組み合わせて食べること」が重要となります。

鉄分の吸収を高める栄養素を4つご紹介します

では、鉄分と合わせてとりたい栄養素とそれを含む食材を詳しく見ていきましょう。

たんぱく質

鉄と結びつくことで朝からの吸収を促進。
血液中の赤血球を作っている「ヘモグロビン」の材料となります。

たんぱく質が含まれる主な食品

牛肉、レバー、カツオ(赤身の魚)、あさりなど。

ビタミンC

鉄分の吸収率を高めます。

ビタミンCが含まれる主な食品

緑黄色野菜(ブロッコリー、小松菜、パプリカなど)。
果物(いちご、みかん、メロン、キウイなど)。

葉酸

ビタミンB6郡のひとつで、ビタミンB12と協調して赤血球をつくる重要な働きをします。

葉酸が含まれる主な食品

レバー(牛、豚、鶏)、魚介類、チーズなど。

ビタミンCや葉酸は植物性食品に多く含まれる一方、ビタミンB12は動物性食品に多く含まれています。
そのため、植物性食品や動物性食品をバランスよく組み合わせて食べることが鉄の吸収率を上げるポイント。
さらに、鉄分は胃酸の分泌が多くなると吸収されやすくなるため、胃を刺激する梅干しや酢といった酸味のあるものを一緒に食べたり飲んだりすることもおすすめです。

鉄分の吸収を妨げる注意すべき栄養素

鉄分の吸収を助ける栄養素がある一方、一緒に食べたり飲んだりすることで、吸収が阻害されてしまう栄養素もあります。
せっかく摂取したのに、ほとんど吸収されていなかったなんて…。そんなことにならないよう、注意すべき食べ合わせや飲み物をしっかりと把握しておきましょう。

タンニン

ポリフェノールの一種で、鉄と結びつくことで「タンニン鉄」に。
タンニン鉄は腸で吸収されにくいため、鉄分を摂取しても体内に取り込まれません。

タンニンが含まれている主な食品

コーヒー、紅茶、緑茶、ウーロン茶、赤ワイン、ビール、ナッツ類、ハチミツ、チョコレートなど

フェチン酸

鉄や亜鉛、カルシウムなどと結合し、体外に排出する働きがあります。

フェチン酸が含まれている主な食品

玄米、ライ麦パン、胚芽パン、豆腐など

食物繊維

過剰に摂取すると、鉄分の吸収率を低下させます。

食物繊維が多く含まれている主な食品

切り干し大根、いんげん豆、ひよこ豆、あずき、とうもろこし、大麦、ごぼうなど

動物性の食品に含まれるヘム鉄は吸収を阻害されにくい

鉄の吸収を阻害する「タンニン」ですが、実は、阻害されるのは植物性食品に含まれる「非ヘム鉄」のみ。
動物性食品に含まれる「ヘム鉄」は、ほかの食べものや飲みものの影響をあまり受けないことがわかっています。
タンニンが含まれるものと一緒に口にするときは、とくに「ヘム鉄」からの鉄分摂取を意識してみましょう。
また、スナック菓子やハム、ソーセージなどに含まれているリン酸塩も鉄分の吸収を阻害する成分。取り過ぎには注意が必要です。

鉄分を体へ取り入れる際の注意事項

鉄分の過剰摂取には男女ともに要注意です

過剰摂取してしまうと、吐き気や下痢、胃腸障害といった胃腸の不調があらわれるようになります。
過剰摂取が続き、鉄が体内に蓄積してしまうと、肝硬変や脂肪肝などの重度の病気を引き起こす危険性もあるのです。
厚生労働省によると、鉄分の上限は以下のとおり。

女性の鉄分耐容上限量

18~49歳40mg

男性の鉄分耐容上限量

18~29歳50mg
30~49歳55mg

鉄分は、不足していても過剰摂取してしまってもどちらもカラダに悪影響を与えます。
なんだか鉄分って難しい…。
そう思ってしまいがちですが、基本的に普段の食事から鉄分を取っていれば過剰摂取となることはありません。問題なのは、サプリメントや鉄剤を誤って服用してしまうケース。
用法用量を守らずに自己判断で大量に服用してしまったり、鉄分の多く取り入れた食事と並行して服用してしまうと過剰摂取となってしまう場合があるのです。
鉄分摂取の基本は食事から。必要摂取量や上限量を把握して、まずはバランスのよい食事から鉄分を取り入れていきましょう。

毎日の食事に鉄分を不足なく取り入れ、バランスのよい妊活を

鉄分は毎日少しずつ失われ、毎日必要になるもの。
鉄分、鉄分…と意識しすぎると途端に難しくなってしまいますが、鉄分はなじみのスーパーで手に入る食材、よく食べる食材にしっかりと含まれています。
そして、その身近な食材を使いながら鉄分の吸収をアップさせるための食べ合わせを考えると、自然とバランスの整った献立になりますよ。
主菜には鉄分の多い牛肉を。
鉄分の吸収を高めるため、副菜にはビタミンCの多いブロッコリーと小松菜。
葉酸とビタミンB12をとるためにデザートにはイチゴとチーズを食べよう…などなど。
ココロとカラダのエネルギーを生み出し、妊娠しやすいカラダへと導いてくれる鉄分を、ぜひ毎日の食事に取り入れていきましょう!

この記事を作るため参考にした文献・サイト名

監修

  • 柳 寿苗

    管理栄養士
    柳 寿苗(やなぎ としえ)

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