栄養

妊活成功のカギを握るDHAとEPA!うれしい効果を徹底解説

血流を改善し、脳や血管年齢を若返らせる効果が期待できるDHAとEPA。
実は、妊娠しやすいカラダづくりのためにも必須となる栄養素です。
妊活にどう働きかけるのか、DHA・EPAの持つすごいチカラを詳しく探っていきましょう。

妊活にも重要な栄養素?のDHA・EPAってなに?

DHA(ドコサヘキサエン酸)とEPA(エイコサペンタエン酸)は、とくにマグロやサバ、イワシなどといった魚に豊富に含まれている栄養素。
健康や美容に効果的な働きが期待できるオメガ3脂肪酸に分類され、健やかな生活を維持するために欠かすことのできない成分です。

また、DHA・EPAは、いずれも体内で作ることができず、食事からの摂取が必要となる必須脂肪酸のひとつ。
しかし、近年では魚を食べる習慣が減っていることから、多くの方が不足傾向に。
そのため、普段の食事からDHAとEPAを意識的に摂取することが重要視されています。

DHA・EPAのうれしい健康効果

では、DHA・EPAには一体どんなチカラが秘められているのでしょうか。ここからは、気になるその健康効果を詳しくご説明していきます。

DHAとEPAの相乗効果で生活習慣病予防

DHAとEPAにはそれぞれ次のような作用があります。

DHAの作用

脳や目の網膜などに豊富に含まれる成分で、脳に直接働きかけて活性化させることのできる数少ない物質。脳機能の向上に有効。
また、悪玉コレステロールの減少と善玉コレステロールの増加、中性脂肪を下げる、視力を上げるといった作用も。

EPAの作用

血液をサラサラにする効果、中性脂肪を下げる作用などがDHAよりも高い物質。

そして、DHAとEPAを一緒に摂ることで、次のような相乗効果が期待できます。

  • 記憶力・注意力・判断力・空間認識力を維持
  • 目の健康を維持
  • 中性脂肪値の低下
  • 皮膚のアレルギー反応を改善
  • 血流を改善

DHAとEPAは、認知症やうつ病予防、脳梗塞、心筋梗塞、高血圧、糖尿病などといった生活習慣病予防に大いに役立ってくれるのです。[参考1]

DHA・EPAが妊活にもたらす働き

カラダの健康を維持するために欠かすことのできない、DHAとEPA。では、妊娠しやすいカラダづくりのため、一体どのような働きかけをするのでしょうか。
さっそく、DHAとEPAが妊活にもたらすうれしい作用を確認していきましょう!

血液サラサラ効果で子宮・卵巣機能が向上

子宮や卵巣に酸素、栄養分、ホルモンを運ぶ働きをしているのが血液。そのため、血流が悪いと、子宮や卵巣機能の低下につながってしまいます。

そこで救世主となるのがDHAとEPA。
この2つの働きにより血液がサラサラに!血流がよくなり、酸素や栄養分が子宮・卵巣までしっかり届けられるようになるので、子宮内膜が厚くなる、質のよい卵子が作られるといったうれしい効果が期待できます。

陰茎海綿体はとっても血管が細いので、血流を良くしておくことは男性にとっても大切なことです。

体外受精治療の成功率UP

アメリカの研究では、DHAとEPAを含むオメガ3脂肪酸は体外受精治療での妊娠率や出産率に深く関わるとも言われているのです!

DHAやEPAの血中濃度が高いほど妊娠率や出産率が高く、DHAやEPAの血中濃度が1%上がると妊娠率や出産率は8%上昇したとされています。
DHAやEPAの摂取することで妊娠の確率が上がる可能性があるなら、積極的に摂取していきたいですね!
ちなみにDHAよりもEPAの方がより良い結果になったとされています。[参考2]

精子無力症のリスクが低下

ここまでは、妊活中の女性におけるDHA・EPAのうれしい作用をみてきましたが、実は、妊活中の男性にもかなり効果的な栄養素。

DHAは、生殖機能の向上にも影響を及ぼしており、DHAの摂取が精子の運動率をアップさせて、精子無力症のリスクを軽減させることが報告されています。[参考3]

なお、精子無力症とは男性不妊の原因のひとつとされる症状。
何らかの理由で精子をつくる機能が低下し、精子運動率が40%以下、前進運動率が32%以下となってしまうことを差します(※正常な精子運動率は60~80%)。

精子の運動率が低いと、膣内に射精されても卵子までたどりつくことができず、受精に至りません。
精子の運動率を向上させ、男性の妊娠力を高めることも妊活成功のカギ。ぜひ、DHA・EPAを意識的に摂取していきましょう。

DHA・EPAの1日の摂取目安量

健康維持のためはもちろん、妊娠しやすいカラダづくりのためにもしっかり摂取していきたいDHAとEPA。
ところで、DHAとEPAの効果を得るためには、一体どれくらい摂取することが望まれているのでしょうか。

厚生労働省が発表している『日本人の食事摂取基準(2015 年版)』によると、DHA・EPAを含むオメガ3脂肪酸全体の1日の摂取目安量は次の通りです。

オメガ3脂肪酸の食事摂取基準

男性の摂取目安量(g/日)

18~29歳 2.0g
30~49歳 2.1g
50~69歳 2.4g

女性の摂取目安量(g/日)

18~29歳 1.6g
30~49歳 1.6g
50~69歳 2.0g
妊婦 1.8g
授乳期 1.8g

出典:[PDF]厚生労働省/日本人の食事摂取基準(2015 年版)

魚からDHA・EPAを摂取する場合の具体的な目安量は、下記を参照してください。

  • あじ:1尾(中サイズ・150g程度)
  • いわし:1尾(中サイズ・100g程度)
  • さば:1切れ(100g程度)
  • さんま:1尾(中サイズ・150g程度)
  • さけ:1切れ(100g程度)

出典:[PDF]独立行政法人 国立病院機構 米子医療センター/DHA・EPA の働き 1回に食べる目安量

DHA・EPAの効率的な摂取方法は『生』

DHAとEPAを豊富に含む魚。早速毎日の食事にとり入れていきたいところですが、その際、気をつけておきたいのが調理法。
実は、DHA・EPAは調理することで、大切な栄養分が煮汁や油に流れ出てしまうのです。

『サントリーウエルネス』によると、生の魚から摂取できるDHA量を100%とした場合、焼き魚で約20%減少。さらに、揚げ物で約50%も減少してしまいます。[参考4]

そのため、DHA・EPAを最も効率的に摂取する方法は、お刺身など生の状態で食べること。脂ののった旬の時期の魚がよりおすすめです。

なお、調理する際は、なるべく脂を逃がさないようにすることが必須。ホイル焼きやスープにして汁ごと摂取するなど、調理法を工夫しましょう。
また、缶詰を利用する場合には、汁ごと使ってくださいね。

DHA・EPAを摂取するのにベストなタイミングは『朝』

DHA・EPAを効果的にカラダへ摂り入れるためには、摂取するタイミングも重要とされています。

マルハニチロの公式ホームページ『【産業技術総合研究所との共同研究】』に記載の通り、マルハニチロと国立研究開発法人 産業技術総合研究所がマウスを使った共同研究をした結果、魚油による脂質代謝改善効果が摂取時刻によって異なることが明らかにされました。
そして、朝食時に魚油を摂取することにより、最大限の効果を発揮することが確認されたのです。[参考5]

つまり、DHA・EPAを摂取するのにベストなタイミングは朝。
朝食時に魚を食べて、その恩恵を効率よく、最大限にカラダへ摂り入れていきましょう。

不飽和脂肪酸は摂取量のバランスが大事

脂質の主成分となる脂肪酸は、その構造によって動物性の脂肪に多く含まれる『飽和脂肪酸』と、植物や魚の脂に多く含まれる『不飽和脂肪酸』に分類されます。

さらに、不飽和脂肪酸は、オメガ3(n-3系)脂肪酸、オメガ6(n-6系)脂肪酸などの『多価飽和脂肪酸』と、オメガ9(n-9系)脂肪酸などの『一価不飽和脂肪酸』に分けられます。
どの脂肪酸もカラダにとって不可欠なものですが、重要なのは摂取量のバランス。

飽和脂肪酸:一価不飽和脂肪酸:多価不飽和脂肪酸の比率は3 :4 : 3であることが望ましいとされ、さらに、多価不飽和脂肪酸は、オメガ3:オメガ6=1:4~5のバランスで摂取することが推奨されています。[参考6]

飽和脂肪酸:一価不飽和脂肪酸:多価不飽和脂肪酸=3:4:3
オメガ3:オメガ6=1:4~5

不足しがちなオメガ3脂肪酸の摂取を積極的に

ちなみに、前項の図からもわかる通り、紅花油・コーン油といったサラダ油にはオメガ6脂肪酸、オリーブオイルにはオメガ9脂肪酸が多く含まれており、私たちが日常的に摂っている脂質はほぼオメガ6とオメガ9で占められています。
一方、魚を食べる習慣が減少している現代の食生活では、オメガ3が圧倒的に不足気味。

オメガ6・オメガ9:日々の食生活で十分に充足・摂りすぎていることも
オメガ3:圧倒的に不足

普通の食生活を送っていれば、オメガ6・オメガ9は十分に摂取できているので、オメガ3の摂取量を意識的に増やし、健やかなカラダのため、妊娠しやすいカラダのために、理想とされる脂質バランスを目指しましょう。

DHA・EPAは熱と酸化に要注意です

妊活でも積極的に摂っていきたいDHAとEPAですが、実は、摂取時に押さえておきたい2つの注意点があります。

熱に弱い

すでにお話した通り、DHA・EPAを魚から摂る場合、栄養分を最も効率的に体内へ吸収するには、お刺身など生の状態で食べることがベスト。焼き魚で約20%、フライで約50%と、熱を加えることでDHA・EPAともにかなり減少してしまいます。

そのため、魚に熱を加える際は、調理法を工夫するようにしましょう。
ちなみに、焼く・揚げる・煮るのうち最もおすすめの調理法は『煮る』こと。短時間でサッと煮て、煮汁とともにいただきましょう。

また、DHA・EPAといったオメガ3脂肪酸を豊富に含む、アマニ油やエゴマ油を使用する際も要注意。やはり加熱調理には向いていません。
サラダや豆腐にかけるなど、熱を加えない食べ方で効率的に摂取してくださいね。

酸化しやすい

DHA・EPAを含むオメガ3脂肪酸は、とくに酸化しやすい脂です。酸化によって劣化してしまうと、オメガ3の持つうれしい効果がすべて帳消しに。
血管を弱くさせてしまうなど、かえってカラダの害となってしまう危険性もあります。

そのため、魚を食べる場合には、旬の時期の新鮮なものをすぐに食すようにしましょう。魚の脂質は、水揚げ後の時間経過とともに酸化が進んでしまいます。

また、アマニ油やエゴマ油も長期保存には向きません。熱にも弱く、空気に触れると酸化してしまうので、20℃以下の温度で保存し、1ヶ月を目安に使い切るようにしてください。[参考7]

魚に含まれる水銀の健康被害は?

DHA・EPAを豊富に含む魚。
積極的に摂り入れていきたいものの、カラダの害となる水銀を摂りすぎてしまうことはないのでしょうか。

『厚生労働省/魚介類に含まれる水銀について』に記載の通り、自然界に存在する水銀は食物連鎖の過程で魚の体内に蓄積されるため、日本人の水銀摂取の80%以上は魚介類由来となっています。

日本人の平均的な水銀摂取量は健康を害するレベルではないことも明らかにされており、それほど神経質になる必要はありません。
ただし、水銀含有量の高い魚介類の食べすぎには要注意!

  • マグロ類:マグロ、カジキなど
  • サメ類:ヨシキリザメ・ドチザメなど
  • 深海魚類:キンメダイ・ムツなど
  • クジラ類:マッコウクジラ・イシイルカなど

偏った食材を多量に食べることは避け、バランスよい食生活を心がけていきましょう。[参考8]

妊娠期・授乳期にも大切なDHA・EPA

DHA・EPAは、妊娠期・授乳期にも意識して摂取したい大切な栄養素。胎児および乳児の脳や目などの発育をサポートする重要な働きをしてくれるのです。
ほかにも赤ちゃんのアレルギーリスクの低減や、早産リスクの低減にも働くとされています。

妊娠中にDHA・EPAを摂ると、血液中のDHA・EPAが増加し、胎盤を通じて赤ちゃんに届けることができます。
また、授乳期には、母乳を通じて赤ちゃんへ与えることができますよ。

近年、魚を食べることが減っているため、DHA・EPAがの摂取量が不足しやすくなっています。
胎児期から乳児期は、脳や目などの神経系が著しく発達する大切な時期。生まれてくる赤ちゃんのためにも、お母さんの為にもDHA・EPAを意識して摂取するようにしましょう。

妊娠中には食べる魚の種類と量に注意

ただし、妊娠中には魚の摂取方法に要注意!
これまでの研究により、水銀摂取が胎児の発育に影響を与える可能性のあることが指摘され、厚生労働省から妊娠中の魚介類摂取について注意喚起されています。

ちなみに、厚生労働省のパンフレット『これからママになるあなたへ』に記載の通り、注意しなければならないのは、食べる魚の種類と量です。 [参考9]
前項でご説明した水銀含有量の高い魚を偏って食べること、多量に食べることはNG。

アジやサバのように、とくに注意が必要とされていない魚もあるので、いろいろな魚を上手に組み合わせながらバランスよく摂取していきましょう。

DHA・EPAで妊娠しやすいカラダへ

血液をサラサラにしたり、中性脂肪を低下させたりなど、健やかな毎日を送るために欠かせないDHAとEPA。
さらに、子宮や卵巣機能を向上させる働きや体外受精での妊娠・出産率を向上してくれる働き、精子の運動率をアップさせる働きも期待でき、妊活中のカップルにもうれしい働きかけをしてくれる栄養素です。

しかし、DHA・EPAともにカラダにとって不可欠な成分であるものの、魚を食べる習慣が減ってきている現代の食生活では、摂取量が不足してしまいがちに。
健康を維持するためにも、妊娠力を向上させるためにも、ぜひ日々の食事へ意識して摂り入れていきましょう。

この記事を作るため参考にした文献・サイト名

監修

  • 柳 寿苗

    管理栄養士
    柳 寿苗(やなぎ としえ)

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