妊活中の”朝食抜き”は危険!?摂るべき3つの栄養素と注意点
妊娠しやすいカラダづくりのためには、バランスの取れた食事から栄養素を取り入れることが大切。でも、妊活中とはいえ忙しい日々に、気になるボディライン。朝くらいなら…と、朝食を抜いていませんか?
実は、妊活中の朝食抜きは危険信号。軽い気持ちで朝食を食べないでいると、妊娠しにくいカラダになってしまう場合があるのです。とはいえ、朝食が大切と言われても、どうしてなのか、何を食べればよいのかよくわからないのが本音。
そこで、朝食がどのように重要なのか、また具体的にどのようなモノを食べると効果的なのかを詳しく探っていきましょう。
妊活中の朝食、なぜ食べないといけないの?
朝目覚めてすぐのカラダは、脳や神経、内臓の働きが低下していて、血糖値、体温ともに低い状態。さらに、脳は寝ている間もずっと活動しつづけているため、起床時はエネルギーが不足しているのです。そんな体にしっかりとエネルギーを補充することが朝食の役割。
このように、妊活中じゃなくても朝食をとるのは大事ですが、妊活中は、さらに意識して朝食をとることを心がけましょう。でも、どうしてなのでしょうか?
ここでは、「妊活中に朝食を抜くことによる4つの影響」を解説します。
血糖値が乱れて排卵障害になりやすくなる
1日の摂取カロリーが同じでも、朝食を抜くと、昼食後、夕食後の血糖値が急激に上昇しやすくなるといわれています。食事をして血糖値が高くなると、すい臓からインスリンというホルモンが分泌され、一定時間をかけて血糖値を下げるように作用。
通常は、この血糖値の上昇と下降は緩やかに行われます。しかし、朝食を抜いてしまうとカラダのエネルギーが不足し、血糖値が下がった状態に。
そのまま昼食、夕食を食べると、血糖値が一気に上昇してしまいます。そしてそれを下げるためにインスリンが大量に分泌されることで一気に下降。
このような血糖値の急激なアップダウンは、自律神経のバランスを乱して排卵障害を引き起こしてしまうなど、不妊の一因となってしまう可能性があるのです。
妊活中に朝食をしっかり食べPCOS女性の排卵率が改善
また、イスラエルの研究チームによって、朝食をしっかり食べて、夕食を軽めに食べることでPCOS(多嚢胞性卵巣症候群)女性の排卵率が高まることが明らかにされました。
PCOS女性には、インスリン抵抗性(インスリンが分泌されていても血糖が下がりにくい状態)のある人が多いという結果があります。しかし、朝食をしっかり、夕食を軽めに食べることで食後の血糖値の上昇が抑えられ、インスリンをコントロールすることが可能に。
しっかりとした朝食、軽めの夕食という食生活を整えることで、排卵障害の改善につながることが判明したのです。[参考2]
自律神経が乱れ、ホルモンバランスが乱れる
朝食には「生活リズム」を整える役割があります。私たちのカラダには「体内時計」という機能があり、25時間の周期で睡眠や体温、血圧やホルモンの分泌などといった1日の活動リズムをコントロールしています。
その一方、1日は24時間なので、体内時計との間に生じた1時間のズレを調節することが必要となります。
そこで、重要になるのが朝食。朝日を浴び、朝食をしっかりとることで、体内時計がリセットされて、1日の生活リズムが整うのです。朝食をとらない生活を続けると、生活リズムを整えるスイッチが入らず、「体内時計」と「生活リズム」の間にどんどんズレが生じてしまいます。
このズレはカラダにとって大きなストレスとなり、自律神経の乱れを引き起こす原因となってしまいます。自律神経は女性ホルモンと密接な関係があります。そのため、自律神経が乱れることで、女性ホルモンのバランスも崩れ、不妊の一因となってしまう可能性があるのです。
カラダが冷えやすくなる
朝食には、基礎代謝を高め、体温を上げる役割があります。そのため、朝食をとらないと体温が上がらず、カラダが冷えたままの状態に。
「冷え」は妊娠力を下げる一因とされています。カラダが冷えると血流が悪くなり、卵巣や子宮の機能が低下して、不妊体質になってしまう可能性があるのです。
妊娠率アップのカギを握っているのは、毎日の食生活。妊娠しやすいカラダづくりのために、朝食をしっかり食べる習慣をつけましょう。
妊活中の朝食で摂るべき3つの栄養素
妊娠しやすいカラダづくりのために大切な朝食。でも、食べればどんなものでもOK、というわけではありません。 脳とカラダの栄養になるもの、さらにカラダを温めるものを意識することが重要。
とくに朝食で積極的に摂りたい栄養素は、「炭水化物」「たんぱく質」「ビタミン、ミネラル」です。朝のカラダに必要な栄養素を上手に取り入れて、バランスの取れた朝食を目指しましょう!
栄養素(1) 炭水化物
「炭水化物」に多く含まれている「ブドウ糖」は、脳の大切なエネルギー源。
脳は寝ている間もエネルギーを消費しているので、朝の補給は必須です。ブドウ糖を多く含むご飯やパンなどの炭水化物を朝食でしっかり摂るようにしましょう。
なお、お米を炊くときに雑穀を加えて雑穀米にしたり、白いパンをライ麦パンなどに変えたりと、たんぱく質、ビタミンやミネラル、食物繊維などの栄養素がプラスされ、栄養価がアップします。
意栄養素(2) たんぱく質
納豆や乳製品、卵などに含まれる良質な「たんぱく質」は、カラダの構成に欠かせない栄養素。カラダが冷えている朝の体温を上げ、カラダを目覚めさせてくれます。
たんぱく質には、肉や魚、卵などに多く含まれる動物性たんぱく質と、大豆製品などに多く含まれる植物性たんぱく質の2種類があります。
健康に気をつけており、ダイエットなどで野菜中心の食生活、動物性たんぱく質を控えた食生活になっている場合、たんぱく質不足に陥りがち。植物性たんぱく質は吸収率が低く、体内で有効利用されにくいのです。
その一方で必須アミノ酸を豊富に含み、体内で利用されやすい動物性たんぱく質ですが、脂質が多く含まれていたり、悪玉コレステロールや飽和脂肪酸摂りすぎてしまうなどの不安要素もあったりするため、動物性たんぱく質に偏った食生活も問題です。
カラダの土台となるたんぱく質は、妊娠しやすいカラダを作るためにも必須の栄養素。動物性と植物性が1:1になるよう、バランスよく摂取することを意識しましょう。[参考3]
栄養素(3) ビタミン、ミネラル
「ビタミン・ミネラル」は、カラダに活力をつけたり、脳がブドウ糖を消費したりするときにも欠かせないもの。野菜や果物で効率的に摂取することができます。
調理が必要な野菜は忙しい朝にちょっと…。そんなときは、前日にスープなどを作っておきましょう。夕ご飯に具だくさんスープを多めに作っておくのもオススメです。そうすれば朝は温めるだけ。ひと工夫で手軽に取り入れることができますよ。
また、果物は皮ごと食べたり、ヨーグルトなどに混ぜて食べたりするとさらに栄養価がアップします。
妊活中の朝食で注意すべきポイント2
脳とカラダを元気にし、妊娠しやすいカラダへと導いてくれる大切な朝食。でも、朝食をとるうえで、いくつか気をつけたいポイントがあります。朝食効果を最大限に発揮するため、注意すべき点をしっかりと把握しておきましょう。
生野菜サラダは体を冷やすため気をつけましょう
野菜を朝食に取り入れる場合は、食べ方に注意。朝にぴったりと思われがちなヘルシーで栄養たっぷりの生野菜サラダは、水分を多く含んでいるためカラダを冷やしてしまいます。
朝は1日の中で最も体温が下がっている時間。カラダを温めるために、「温野菜」で食べることを意識しましょう。ただ、生野菜はビタミンの損失が少ないというメリットもあります。
生野菜を食べるときは温かいスープやホットドリンクを組み合わせるようにしましょう。
パンにはマーガリンではなく、バター
朝食はパン派。そのまま食べたり、ジャムなどをぬって食べたり、サンドイッチにしたりと、いろいろな食べ方を楽しむことができる主食です。ところで、パンには何をぬって食べていますか?
マーガリンをたっぷり、という人は要注意。マーガリンには、妊活中や妊娠中の女性にとって天敵といわれる「トランス脂肪酸」がたっぷりと含まれているのです。
マーガリンに含まれるトランス脂肪酸による影響は妊活にも…
トランス脂肪酸とは、カラダに悪い油のこと。肥満や動脈硬化、悪玉コレステロールの増加、がんや心臓病といったさまざまなリスクを高めると考えられている物質です。
アメリカでは、トランス脂肪酸が排卵障害や精子の質の低下、受精、胚の発達の障害になるという報告もされています。トランス脂肪酸は、マーガリンやドレッシングをはじめ、ポテトチップスなどの加工食品にも多く使われています。
パンには、マーガリンではなくバターがオススメ。市販のパンに使われているショートニングもトランス脂肪酸を含みます。妊娠はもちろん、健康のためにパンより小麦を選び、極力とらないように意識しましょう。[参考4][参考5]
正しい朝食を習慣づけて妊活力をUPさせよう
忙しいから、ダイエット中だから、朝は食べなくても…。軽視されることも多い朝食ですが、“朝食こそ”が妊娠率アップのカギ。エネルギー不足で体温も低くなっている朝一番の脳とカラダのために、朝食をしっかり食べて、妊娠しやすいカラダづくりを心がけましょう。
妊娠しやすいカラダづくりとは、私たちにもとから備わっている妊娠する力を呼び起こすこと、赤ちゃんを迎え育てるための健やかなカラダをつくることです。
そのためには、代謝をよくして体温を上げ、カラダに栄養を行き渡らせておくこと、つまり朝食をしっかり食べることが大切です。ただし、アレも食べなきゃコレも食べなきゃ…、と神経質に考えすぎないようにしましょう。
今まで朝食をとる習慣がなかった場合は、食べること自体にストレスを感じてしまう人もいるかもしれません。カラダを元気にするための朝食がストレスになってしまっては、本末転倒になってしまいます。
- まずは野菜ジュースやヨーグルト、ゆで卵、バナナ、豆乳などからはじめてみよう…
- 冷蔵庫の残り野菜を使った具沢山スープにしてみよう…
- 夕食のお鍋の残りを使ってたまご雑炊を食べよう…
毎日完ぺきな朝食である必要はありません。脳とカラダを元気にすること、カラダを温めることを少しだけ意識して、できることから気軽に朝食習慣をつけていきましょう!
この記事の参考文献・サイト名
- [参考1]朝食欠食率 | e-ヘルスネット 情報提供(厚生労働省)
- [参考2]Effects of caloric intake timing on insulin resistance and hyperandrogenism in lean women with polycystic ovary syndrome|Daniela Jakubowicz, Maayan Barnea, Julio Wainstein, Oren Froy
- [参考3]食品栄養学(タンパク質)|帯広畜産大学
- [参考4][PDF]「トランス脂肪酸」に関する意見書|内閣府
- [参考5][英語論文]Fatty acid intake in relation to reproductive hormones and testicular volume among young healthy men
- [参考]栄養・食生活|厚生労働省
- [参考]農林水産省/朝ごはんを食べないと?:農林水産省
監修
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管理栄養士柳 寿苗(やなぎ としえ)