栄養

妊活に必須のビタミンAは過剰摂取NG?βカロテンとの関係も解説

ビタミンAは妊活中にも妊娠中にも欠かせない重要な栄養素。しかし、摂りすぎにも注意しなければならない、少しやっかいな存在なんです。

そこで、妊活におけるビタミンAの働きと効果、さらに、過剰摂取にならない上手な摂取方法を徹底解説します!
ビタミンAを丸ごと把握して、妊活へ上手に摂りいれていきましょう。

    妊活前に知っておきたいビタミンAの基礎知識

    冒頭でもお伝えした通り、ビタミンAはカラダに重要な栄養素であるものの、摂りすぎるとカラダの害となってしまう少々難しい栄養素。
    そこでまずは、ビタミンAの働きや1日の摂取目安量など、ビタミンAの基礎知識をしっかりと把握していきましょう。

    ビタミンAとは

    水に溶けにくく脂に溶けやすい脂溶性ビタミンで、主に、目の機能や、皮膚・粘膜の健康を維持するために重要な働きをします。

    ビタミンAの体内での働き

    • 目の働きを正常に保つ
    • 粘膜と皮膚の健康を保って細菌からカラダを守る
    • 心臓、肺、腎臓などの器官の正常な形成や維持
    • 子どもの成長を促進

    など。
    なお、ビタミンAには次の2種類のタイプがあります。

    • ビタミンA
      ⇒代表的な成分:レチノール(レバーなどの肉類やウナギなどの魚介類といった動物性食品に豊富)
    • プロビタミンA:体内で必要に応じてビタミンAに変換される物質
      ⇒代表的な成分:β-カロテン(緑黄色野菜などの植物性食品に豊富)

    ビタミンAの1日の摂取量

    厚生労働省の『日本人の食事摂取基準(2015年版)概要』に記載の通り、ビタミンAの1日の摂取量及び上限量は次の通り定められています。[参考1]

    女性のビタミンA摂取 推奨量

    18~29歳 650μgRAE
    30~49歳 700μgRAE
    妊婦(付加量)+80μgRAE
    授乳婦(付加量)+450μgRAE

    女性のビタミンA摂取 上限量

    18~49歳 2,700μgRAE

    男性のビタミンA摂取 推奨量

    18~29歳 650μgRAE
    30~49歳 700μgRAE

    男性のビタミンA摂取 上限量

    18~49歳 2,700μgRAE

    妊活に期待できるビタミンAの働き

    続いて、妊活への効果が期待できるビタミンAの働きをみていきましょう。

    子宮内膜をふかふかにして受精卵の着床をサポート

    ビタミンAは、鉄分とともに子宮内膜の材料となる栄養素です。そのため、ビタミンAが欠乏してしまうと子宮内膜に厚みがなくなり、受精卵が着床しにくくなってしまいます。

    着床率を高めるためには、子宮を厚みのあるふかふかのベッドのような状態にしておくことが大事。ビタミンAで着床しやすい子宮環境を整えましょう。

    胎児の健やかな成長をサポート

    ビタミンAは、細胞・骨・神経の材料となる栄養素です。
    妊娠初期、とくに着床後1~2ヶ月頃は、活発に細胞分裂を繰り返して胎児がどんどん成長していく時期。そのため、この時期にビタミンAが不足していると、胎児の成長に影響が出やすくなってしまいます。

    胎児の成長障害や胎児の奇形、早産などを引き起こす恐れがあるので注意が必要です。
    胎児の健やかな成長をサポートするため、妊活中からビタミンAをしっかりと補っていきましょう。

    免疫力をアップさせて感染症を予防

    ビタミンAは、皮膚や、目・鼻・のどなどの粘膜の健康を保ち、ウイルスや細菌などがカラダへ侵入するのを防ぐ働きがあります。
    そのため、不足すると、粘膜が弱くなって免疫力が低下し感染症にかかりやすくなってしまいます。

    いつでも赤ちゃんを安心して迎えられるよう、妊活中にはなるべく薬の服用は避けたいところ。
    ビタミンAで免疫力をアップさせて、ウイルスや細菌に負けないカラダづくりをしましょう。

    抗酸化作用で卵子や精子の老化を防止

    プロビタミンAのβ-カロテンには、活性酸素を消去する抗酸化作用があります。[参考2]

    活性酸素とは、ウイルスや細菌などからカラダを守る免疫細胞として働く一方、加齢やストレス、偏った食生活などが要因となって過剰発生すると、正常な細胞や遺伝子までも傷つけて酸化させてしまう物質。
    活性酸素の攻撃を受けると、卵子や精子も酸化してサビつき、質が低下してしまいます。

    そこで、β-カロテンの抗酸化作用が力を発揮。活性酸素の発生や働きを抑制し、活性酸素そのものも取り除いてくれるので、卵子や精子の老化を防止する効果が期待できます。
    β-カロテンパワーで卵子や精子の質を高めていきましょう。

    妊活でも意識したい!ビタミンAが多く含まれる食品

    ビタミンAの基礎知識と妊活に期待できる働きを押さえたところで、続いては、ビタミンAがどんな食品に含まれているのかを確認していきましょう。

    動物性食品に含まれるビタミンA(レチノール)

    • 鶏レバー(1人分80g):11,200㎍
    • 豚レバー(1人分80g):10,400㎍
    • 牛レバー(1人分80g):880㎍
    • あんこう(1人分40g):3,320㎍
    • うなぎのかば焼き(1人分100g):1,500㎍
    • 銀だら(1人分100g):1,500㎍

    植物性食品に含まれるビタミンA(β-カロテン)

    • モロヘイヤ(1人分70g):588㎍
    • にんじん(皮付き・1人分50g):360㎍
    • かぼちゃ(1人分80g):264㎍
    • 春菊(1人分70g):266㎍
    • ほうれん草(1人分70g):245㎍

    ビタミンAのうち、レチノールはレバーやウナギなどの動物性食品に多く含まれ、β-カロテンは緑黄色野菜などの植物性食品に多く含まれています。

    緑黄色野菜は重要なビタミンA供給源

    なお、日本人のビタミンAは、ほとんどがレチノールではなくβ-カロテンでまかなわれています。そのため、緑黄色野菜はビタミンAの重要な供給源。
    緑黄色野菜不足はそのままビタミンA不足につながってしまう可能性がありますので、意識的に摂取するようにしましょう。[参考3]

    妊活中にも役立つ!ビタミンAの効率的な摂取方法

    ビタミンAを含む食品を把握したら、次に押さえておきたいのが効率的な摂取方法。
    ちょっとしたコツを加えることで、ビタミンAの吸収や効果がグンとアップしますよ。
    早速確認していきましょう。

    ビタミンA+脂質でビタミンAの吸収率がUP

    ビタミンAは油脂に溶ける脂溶性ビタミンのひとつ。そのため、油脂と一緒に摂取することでビタミンAの吸収が高まります。
    ベストな調理方法は、油を使って炒めること。

    例えば、にんじんを食べるなら、生や煮物にするよりも、バターソテーなどにした方がにんじんに含まれるβ-カロテンの吸収がよくなるのです。
    油で炒めるほか、ごま和えやアーモンドをまぶして食べるのもおすすめですよ。

    ビタミンACEの相互作用で抗酸化力がUP

    ビタミンA・ビタミンC・ビタミンEは、それぞれ優れた抗酸化作用をもつビタミン。
    「抗酸化ビタミン」または「ビタミンACE(エース)」と呼ばれ、活性酸素の働きを抑えます。[参考4]

    ビタミンA・C・Eは、単体で摂ることでももちろん効果を発揮しますが、実は、組み合わせるとパワーアップ。
    お互いに作用しあって抗酸化力がさらに高まるといわれています。

    ちなみに、ビタミンCが多く含まれているのは果物や野菜など。
    ビタミンEはナッツ類や種子類などに多く含まれています。

    ビタミンCを多く含む主な食品

    • アセロラ
    • いちご
    • 赤・黄パプリカ
    • 菜の花
    • ブロッコリー

    など。

    ビタミンEを多く含む主な食品

    • アーモンド
    • 落花生
    • ヒマワリの種
    • ニジマス
    • うなぎのかば焼き

    など。
    ビタミンACEの食材を上手に組み合わせてバランスよく摂取していきましょう。

    妊活でも気をつけたいビタミンA不足の健康被害

    すでにお話した通り、日本人のビタミンA摂取は、動物性食品よりも植物性食品、とくにβ-カロテンからの割合のほうが多いとされています。
    そのため、β-カロテン不足は、そのままビタミンA不足へとつながってしまう恐れが。

    では、体内のビタミンAが不足すると、どのような健康被害が生じるのでしょうか。

    粘膜が乾燥して免疫力が低下

    ビタミンAは粘膜の健康を維持する栄養素。
    そのため、ビタミンAが不足するとのどや鼻の粘膜が乾燥して、細菌やウイルスがカラダに侵入しやすくなり、風邪や感染症にかかりやすくなります。
    消化器官の粘膜も傷つきやすくなるため、消化不良を起こすことも。

    さらに、皮膚や髪がかさつくようになったり、爪がもろくなるなどの症状が見られる場合もあります。

    夜盲症を発症

    目の網膜には光を感じる「ロドプシン」という物質があり、ビタミンAはその主成分となっています。
    そのため、不足すると暗いところで目が見えにくくなり、ひどくなると夜盲症を発症します。

    夜盲症とは、夜になると視力が衰え、目がよく見えなくなる病気のこと。症状が進行すると失明することもあります。
    また、ビタミンAの不足により目の粘膜も乾燥してしまうため、ドライアイや疲れ目の原因となることも。

    ビタミンAの過剰摂取は妊活中でも要注意です!

    ビタミンAは、不足すると感染症にかかりやすくなったり夜盲症を発症してしまう場合がありますが、現在の日本の一般的な食生活を送っていれば不足の心配はほとんどないといわれています。

    実は、不足よりも注意しなければならないのは摂りすぎてしまうこと。
    ビタミンAは脂溶性でおよそ90%が肝臓に貯蔵されるため、摂りすぎるとさまざまな健康被害が生じてしまうのです。

    なお、ビタミンAの過剰摂取となる主な原因は次の通り。

    • レバーなどビタミンAを多量に含む食品の摂取
    • ビタミンAを含有するサプリ・薬剤などの大量な服用

    では、ビタミンAを摂りすぎてしまった場合、一体どのような健康被害が生じるのかを詳しく確認していきましょう。[参考5]

    中毒症状を引き起こす

    ビタミンAを摂りすぎると、次のような急性、または慢性の中毒症状を引き起こす場合があります。

    急性の中毒症状

    • 腹痛
    • おう吐
    • めまい
    • 全身皮膚落屑(らくせつ)

    など。

    慢性の中毒症状

    • 関節・骨の痛み
    • 皮膚乾燥
    • 食欲不振
    • 体重減少
    • 頭痛
    • 骨粗しょう症

    など。

    妊娠初期の胎児に影響

    ビタミンAは、お腹の赤ちゃんの健やかな発育に必要となる栄養素ですが、妊娠初期に過剰摂取が続くと、胎児の奇形のリスクが高まることが報告されています。

    なお、厚生労働省では、ビタミンAの過剰摂取を防ぐために1日の摂取上限値が定められています。

    女性のビタミンA摂取 上限量

    18~49歳 2,700μgRAE

    男性のビタミンA摂取 上限量

    18~49歳 2,700μgRAE

    ただし、妊娠3ヶ月以内または妊娠を希望する女性は、年齢による上限値ではなく、妊婦の推奨量を超えないよう注意喚起がされています。

    女性のビタミンA摂取 妊婦の推奨量

    18~29歳 730μgRAE
    30~49歳 780μgRAE

    赤ちゃんの健やかな発育のために、妊活中からビタミンAの過剰摂取に注意しましょう。

    β-カロテンなら妊活中でも過剰摂取の心配なく安心

    ビタミンAは過剰摂取に注意が必要な栄養素ですが、実は、摂りすぎが問題となるのはレバーなどの動物性食品に含まれる「レチノール」のみ。

    緑黄色野菜に多く含まれる「β-カロテン」は、体内のビタミンAが不足したときのみビタミンAに変換され、余った分はそのまま排泄されるので、過剰摂取の心配はないとされています。
    厚生労働省でも、β-カロテンについて1日の摂取上限量は定められていません。

    そのため、ビタミンAは、β-カロテンを上手に利用していくことが大切です。
    とくに妊活中や妊娠初期には、サプリなどの健康食品やビタミンA(レチノール)を高濃度に含むレバーなどの食品を継続して多量に食べることは避けましょう。

    β-カロテンの摂取方法と妊活中にもおすすめの組み合わせ

    ビタミンAの過剰摂取を防ぐカギはβ-カロテンにあり!
    そこで最後に、β-カロテンの効率的な摂取方法と効果を高めるおすすめの組み合わせを確認していきましょう。

    油脂・加熱・細かく刻むで吸収率UP

    β-カロテンは、油脂と一緒に摂取するほか、加熱したり細かく砕いたりすることで体内への吸収が高まることが報告されています。[参考6]

    そのため、おすすめの摂取方法はまさに、細かく刻んで油で炒めること。
    β-カロテンたっぷりの緑黄色野菜は、生ではなく、油やバター炒めで。サラダでもオリーブオイルなどをかけていただきましょう。

    また、野菜の皮は栄養が豊富な部分。
    にんじんやカボチャなどの皮部分にはたっぷりのβ-カロテンが含まれていますので、できるだけ皮ごと食べることをおすすめします。

    β-カロテンの効果UP!おすすめの組み合わせ

    吸収率を高める摂取方法を確認したところで、続いては、β-カロテンの効果を高めるおすすめの組み合わせをご紹介します。[参考4]

    β-カロテン×ごま

    ごまには脂質が多く含まれているので、β-カロテンと相性ばっちり。一緒に摂取することで体内への吸収率が高まります。
    さらに、ごまには優れた抗酸化作用のあるビタミンEも豊富。

    β-カロテンの抗酸化作用と相まって、その効果をパワーアップさせることができますよ。
    春菊やほうれん草、小松菜など、β-カロテン豊富な葉野菜は、ぜひごま和えにしていただきましょう。

    β-カロテン×青魚

    いわしなどの青魚に豊富に含まれるDHA・EPAは、血液をサラサラにする効果があり、妊娠力を高めるためにもぜひ摂取しておきたい栄養素。

    β-カロテンの抗酸化作用により青魚に含まれるDHAとEPAの酸化が防げるので、一緒に摂取することで血流改善効果がアップします。

    青魚と野菜を一緒に油で炒めたり、油で揚げた魚ににんじんやピーマンなどで作った南蛮ダレをかけて食べるなど、β-カロテン×魚、さらに油をプラスした食べ方がおすすめですよ。

    野菜ジュースでβ-カロテンを手軽に摂取も◎

    カゴメの研究により、生のにんじんよりも野菜・果実ミックスジュースを摂取する方が、β-カロテンを効率的に吸収できることが確認されています。[参考6]

    というのも、野菜ジュースは原料として加熱や破砕された野菜の加工品を使用しているので、生の野菜よりもβ-カロテンの吸収が良くなっているため。

    忙しく時間が無いときなどには、野菜ジュースで手軽にβ-カロテンを補うのもおすすめです。

    妊活中のビタミンAはβ-カロテンを上手に活用しましょう

    ビタミンAは妊娠しやすいカラダづくりのためにも、胎児の健やかな発育のためにも欠かせない栄養素です。

    しかし、摂りすぎるとかえってカラダの害となってしまうやっかいな存在。
    頭痛などの中毒症状を引き起こしてしまうほか、胎児の奇形のリスクを高めてしまうため、とくに妊活中の過剰摂取には注意が必要です。

    そこで救世主となるのが、緑黄色野菜などに多く含まれているβ-カロテン。
    体内で必要な場合にのみビタミンAへ変換されるので、摂りすぎる心配がありません。

    ビタミンAは過剰摂取に要注意!妊活中にはβ-カロテンを味方につけて、上手に摂りいれていきましょう。

    この記事を作るため参考にした文献・サイト名

    監修

    • 管理栄養士
      柳 寿苗(やなぎ としえ)

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